衛生管理情報(4)「温度管理」の徹底で食中毒を予防(後篇)

發布日期:8/10/2020

疎かになりやすい 「加熱工程のある食品」の温度管理

 新型コロナウイルス感染症が人々の生活や行動に、様々な変化を与えています。例えば自炊やテイクアウト・宅配の増加など、食品事業者にも影響が出ています。
 この業態や生産体制の変化、例年とは異なる特殊な環境は、細菌性食中毒のリスクが高まる可能性が各方面から指摘されています。
 食中毒の予防には、食中毒菌を「付けない」「増やさない」「やっつける」の3原則に基づいた様々な対策が必要ですが、次回は「温度管理」について取り上げ、その中でも特に疎かになりやすい「加熱工程のある食品」の温度管理について、注意すべき点をご紹介したいと思います。

 ➤ 加熱は、食品の「中心」まで行いましょう 表面だけではNGです !
 食中毒を起こす細菌の多くは加熱によって死滅します。厚生労働省《大量調理設施衛生マニュアル》では、加熱調理食品は75℃1分間以上の加熱が必要とされています。この時、条件を満たすべきは食品の表面温度ではなく、食品の中心温度です。加熱時の温度測定を行う場合には、中心温度の測定することや、中心温度を十分に保証できる測定方法にて実施する必要があります。

 ➤ 加熱後は、速やかに冷却しましょう 加熱した食品でもご注意を !
 食中毒菌の中には、熱に強いもの(耐熱性芽胞菌)や熱に強い毒素を産生するものが存在するため、加熱した食品でも油断は禁物です。これらの食中毒菌等の増殖を防ぐために、加熱後の食品は、「10℃以下、または65℃以上で管理する」ことが重要です。また、加熱調理後に食品を冷却する場合には、「速やかに冷やす」ことが重要です。

 《大量調理設施衛生マニュアル》が推奨する冷却の条件:
  ① 加熱後、30分以内に中心温度を20℃付近
  ② 加熱後、60分以内に中心温度を10℃付近
 これは、食中毒菌がもっとも増えやすい温度帯が「20℃~50℃」であるためで、食品がこの温度帯にある時間をできるだけ短くすることが、食中毒防止に極めて重要です。そのため、飲食店や食品工場においては、特に以下の点に注意して取り組みましょう。

食中毒予防に関連したサービスの例
  • 微⽣物管理上の各種課題に対する問題解決や改善活動のサポート
  • 衛⽣教育(現場教育、講習会、専⾨教育)
  • HACCP関連の各種認証取得、維持管理に関するサポート
  • サニテーションマニュアル等の作成指導、現場定着指導
  • 製造ラインや製造環境の洗浄消毒、清掃業務
  • 各種設備改善⼯事
 
加熱調理後も要注意!耐熱性芽胞菌
耐熱性芽胞菌は、通常の加熱調理で⽣存し、また加熱により芽胞の発芽、増殖が促進されます。
 ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)
  • 特徴:人や動物の腸管、土壌、下水などに広く存在し、肉魚野菜などに付着していることが多い。酸素のないところで増殖する。
  • 主な原因食品:カレーシチューなど(特に大量調理する場合)
    ➔ とろみがあり量が多い食品では加熱後の温度低下が緩やかになりまた加熱時に酸素が追い出されるなど増殖に適した条件となる。
  • 対策:加熱調理後は常温で放置せず、早く冷えるように底の浅い容器に小分けして冷却する。また容器に移す際はよく混ぜて酸素に触れさせる。保存後は再加熱する。その際、ムラなく加熱できるようよくかき混ぜながら行う。
 セレウス菌(Bacillus cereus)
  • 特徴:土壌、水など自然界に広く存在。酸素のあるところで増殖する。
  • 主な原因食品:米飯、炒飯、ピラフ、麺類など(穀類が原材料の食品)
    ➔ 米飯の炊飯後等に適切な保温をせず室温等に長時間放置されると増殖し嘔吐毒(セレウリド)を産⽣。嘔吐毒は耐熱性があり炒飯ピラフ等に調理しても残る。
  • 対策:米飯麺類等の加熱調理後、速やかに冷却する。


出典:freepik
(ESCO News Letter 第9卷2號より抜粋)